福嶋シェフのテーマ食材黒豆
たとえば黒豆煮を上手にリメイクすれば、違う感覚で楽しめる。
Q. 今回福嶋シェフのテーマ食材「黒豆」の扱い方や、調理アレンジについて教えてください。
お正月が近いこともあり、黒豆煮のアレンジ料理として中国料理のスイーツ・胡麻団子を考えました。黒ごまあんの代わりに黒豆煮を崩して使います。ラードと混ぜることで甘みも控えめに感じられ、お節料理とは違う感覚で楽しんでいただけるのではないでしょうか。
乾物から使う、もう一品の黒豆料理では、豆鼓(とうち)の作り方を応用しています。塩麹を使うと、ご家庭でも簡単にできると思います。切れ目を入れてから蒸す戻し方は、中国料理の乾貨(乾物のこと)のテクニック。こうすることで、芯までムラなく戻ります。今回は白身魚を使いましたが、豚肉にも合いますよ。
Q. 福嶋シェフが考える豆料理のコツや魅力を教えてください。
お店では乾物をよく使います。スペシャリテのフカヒレのほか、アワビやナマコなどは何日もかけて戻しています。植物性の乾物で代表的なのが豆。大豆や白いんげんなどは、酸っぱく煮て前菜として出したり、だしで煮ふくめたりして使います。豆板醤などの調味料にすることもありますね。もちろん、そら豆や枝豆などのフレッシュな豆も不可欠な食材です。
豆の魅力は、力強さでしょうか。火入れした豆はパワーがみなぎっていて、料理のアクセントになったり、味に深みをつけてくれます。豆乳なども、食材のうまみを引き出してくれますね。
乾燥豆の料理のコツは、なんといっても「しっかり戻す」こと。お店では、必ず前日の晩に翌日に使う分の豆を浸して帰ります。一度豆の浸水を忘れたことがあって、慌ててその日の朝に戻したのですが、シェフに一目で見破られて叱られました。しっかり戻さないと、いくら火入れしても芯が残ってしまうのです。
Q. 福嶋シェフからひと言お願いします。
「Wakiya一笑美茶樓」で10年間研鑽を積んできましたが、中国料理の調理法はバリエーションの広さや奥深さがありながら、新たな食材を合わせたり、西洋の調理法も取り入れたりすることで、中国料理にさらなる可能性を感じます。伝統を踏襲しつつ、革新する料理を、ぜひ当店で召し上がってください。
福嶋シェフの「黒豆」レシピ
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特長
乾物の黒豆の戻し方からご紹介します。黒豆を塩麹で発酵させ、スープの調味料のように使う料理です。一晩水につけて戻した豆に切れ目を入れ、豆の芯まで黒い色と塩分を入れていきます。火を入れるときは一定の温度で。時間はかかりますが、よい状態に戻ります。
このソースは、フレッシュなそら豆で作ってもおいしくできるでしょう。
ポイント
黒豆を浸水させるとき、初めから塩と塩麹を入れます。こうすることで豆に塩分が浸透しやすくなります。また、豆は茹でるよりも蒸したほうが、ムラなく豆全体に火入れできます。
蒸しあがった豆は一晩風通しのよいところで乾かします。寝かすことで発酵を促進させています。
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特長
お節料理などで食べる、甘く煮た黒豆を活用した一品です。中国料理のお菓子である胡麻団子はとても簡単に作れるもの。今回はあんを黒豆で代用して作りますが、「だだちゃ豆」のあんでも作ることができます。黒豆煮にはラードを混ぜましたが、だだちゃ豆あんの場合はラードは不要でしょう。
ポイント
低温でゆっくりと揚げはじめ、表面のごまが焦げないようにすることがポイントです。中まで火が入ると、油から浮きあがってきます。そこで油の温度を上げて仕上げると、外はカリッと香ばしく、中は柔らかい胡麻団子になります。